― お知らせ ―

令和6年(2024年) 日本補聴器工業会 年頭所感

2024.01.09

難聴対策を推進するための法整備を

一般社団法人 日本補聴器工業会
理事長 成沢良幸

皆様、新年明けましておめでとうございます。令和 6 年を無事に迎えられたことをお喜び申し上げると共に、平素私ども補聴器業界に対して温かいご理解とご支援を頂戴している皆様方に、心よりお礼を申し上げます。

昨年は、新型コロナウイルス関連の規制も緩和され、マスク無しのお顔も多くみられるようになりましたが、反面、コロナ対策での免疫力低下等の懸念の中、インフルエンザ等その他の感染症の広がりが起こりました。一難去ってまた一難とはこういうことでしょうか。それどころか、世界に目を向けると、残虐な戦争が長期化し、別の新たな戦争も勃発して罪のない子供たちを巻き込んだ殺戮が繰り返されています。国連は世界の平和の維持どころか、無謀な戦争を止めることすら出来ず、平和は如何に脆く、平和維持の困難さの危機に瀕しています。人類はこの危機を如何に乗り越えられるのか、早期に局面が打開できることを切望します。

さて、わが業界に目を向けますと、昨年の当工業会の補聴器出荷台数は、11 月までの累計で前年比+9.5%で、コロナ禍直前の令和元年に対しても+6%を示していて、コロナ禍以前を超えて回復傾向を示しています。結果、年間の出荷台数においても前年比+9%程度で 65 万台程度と予想されます。

近年、わが国の難聴問題に関する社会の関心度は、ほぼ無関心であった以前の状況から少しずつ上がってきていることは皆様も実感されていると思います。この要因として、超高齢社会における様々な聞こえにくさを多くの人々が実感してきていること、それを受けて補聴器や集音器の広告等が頻繁に新聞、テレビ、チラシ、インターネット等で繰り返され、多くの人々の目に触れていることが挙げられます。そして今後、このような人々への繰り返しの訴求によって、聞こえにくさを自覚し出した高齢者が、補聴をすることは恥ずかしい、周りに知られたくないといったネガティブな気持ちを少しずつ薄くし、補聴器を装用する意欲が高まることが期待できるのではないでしょうか。

一方で、わが国の難聴問題を解決するには、聞こえに不便を感じた人々が早期に適切な耳鼻科診療を受け、その上で適切な補聴器の装用を開始する、このような単純な行動を人々が効率的に実行できるための社会の仕組みづくりが欠かせません。耳鼻科の医学会等では人々に聴覚のケアの大切さを啓発し、積極的に難聴診療を受けられるよう、その取り組みを強化しています。また我々業界とともに、難聴診療と補聴器の適正な装用のための、補聴器相談医と認定補聴器専門店・認定補聴器技能者との連携システムを全国の地域に広げる取り組みも強化しています。さらに、全国各地の自治体では、難聴の対象範囲を広く持った、独自の補聴器購入費用の助成制度制定の動きが広がりつつあります。

このように、難聴対策のための社会の仕組みづくりは、課題ごとに進展を見せていて大変喜ばしいことです。しかしながら、この仕組みはそれぞれの地域や組織の事情によって作られるため、その内容の連携性や整合性は確保されにくく、一貫した仕組みとはなっていません。このままでは、仕組みづくりの全国的な広がりにブレーキがかかったり、総合的な仕組みの効果が薄れてしまったりの懸念すらあります。このために必要なことが、国としての難聴対策を一貫して推進させるための法整備なのです。

令和元年に政府に提出された、難聴対策に関する提言書「Japan Hearing Vision」の課題の中には、その解決に現行の法律が足かせになっているものもいくつかあります。また、現状では障害者総合支援法による重い聴力障害のみを対象とする補聴器の購入助成制度があるのみで、他に難聴対策に特化した法律はありません。このために厚労省など国政の関係者は、諸課題の主旨は理解できても、その解決策の根拠となる法律がないために、合理的な策を打ち出せない状況が続いているのです。この膠着状態を解くには、難聴対策を一貫して推進するための基本の法律が必要であり、国には迅速な法整備を望むものです。

新しい年は、罪のない人々が犠牲になる愚かな戦争が止み、世界的な社会不安が軽減され、健全な経済環境が回復する年となることを祈念申し上げまして、年頭のご挨拶とさせていただきます。皆様どうぞよろしくお願い申し上げます